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2012年6月20日

働くママにエールを!(第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部主席研究員 松田茂樹さん)【前編】

投稿者
キラきゃりママ編集部 キラキャリママヘンシュウブ [Editorial department of Kira-caree Mama]
働くママとプレママのためのポータルサイト『キラきゃりママ』の編集部です。
「働くママのリアルを、みんなの知恵で支える」をテーマに子育て、仕事/キャリア、
プライベートなどの切り口から働くママ&プレママに役立つ知恵や情報を発信。
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国や自治体などとの連携で働くママ&プレママが自らのベストワークライフバランスを
見つけることができるよう、サポートしています。

【第4回前編】第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 松田茂樹さん

【テーマ】働くママの俯瞰(ふかん)図


日常のさまざまな役割に奮闘する毎日、自分が人生においてどのような位置にいて、
社会全体でみるとどのような状況にあるのか、俯瞰した目で見てみると、
視野が広がったり、新鮮な気づきがあることも。

第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部の主席研究員で、7歳、5歳、1歳と
三児の父でもある松田茂樹さんに、子育てしながら働くママたちを取り巻く現状と問題点、
今後の見通しについてうかがいました。

-産休・育休中の女性を取り巻く現状を教えてください。

育休の取得者は増えています。
育休は1990年代から教育関係や一部企業ではありましたが、
90年代前まではありませんでした。
しかし、法律が整備され、皆さんが取得されるようになった90年代以降、
育休の取得者は3倍程度増えています。
国立社会保障・人口問題研究所「第13回出生動向基本調査(夫婦調査)」によると、
2000~2004年の取得率は、13.8%になっています。

2010年に3歳未満のお子さまを持つ方に対しては、100人以上の従業員をもつ企業は、
法律により企業は短時間勤務を講じないといけなくなりました。
時短勤務を整備している会社も増え、かなりのスピードで育休が普及しているといえます。
従業員数301人以上の上場企業へのアンケート(2010年9月実施 回答数109社、
第一生命経済研究所調査)によると、就学前、法定では3歳未満の子をもつ親を対象に
短時間勤務制度を取り入れている会社は、上場企業の75.2%と今かなり多いですよね。

-育休・短時間勤務の整備以外で、多くの企業が子育て中の従業員向けに
取り組んでいることはありますか?


「情報提供」や「相談」です。
育児休業前後の働き方に対する説明や、休業者に一定の情報提供を行う企業は増えています。
近年、大企業を中心に注目されている「フレックスタイム」導入については、
普及は進んでいますが、フレックスタイム制度=仕事と育児を両立しやすい環境かどうか、
について私は少し疑問をもっています。
もちろん、あるに越したことはないかもしれませんが、会社にいつでも来ていつでも帰れる、
自宅でいつでも働けるという状況になれば、上手に時間管理をしないと労働時間が長くなりがち。
運用の仕方によっては、環境・効率面でよくもなり悪くもなり得る制度といえます。

それよりも大切なのは、育休明けにどういう働き方を選択されるかですね。
出産前と同水準、もしくはそれ以上に仕事をしてキャリアを築く人と、
復帰後ある程度ローギアで働いて子育てがひと段落した後にまたギアをアップさせるという、
2種類の働き方があると思います。後者の働き方に関しては、
やはりそこで継続就業しやすくするキーワードは「育休」と「短時間勤務」であり、
フレックスタイム制度ではありません。

-バリバリ働いている方に関しては、「育休」「短時間勤務」というのは
あまり関係がないということでしょうか?


キャリアを重視して仕事を続けるのであれば、本当にバリバリ働くべき。
それはご自分のキャリアアップや所得アップにもつながります。

一方、ローギアというものも私は必要だと思っています。
実際、ローギアな働き方を望む人は多いですよ。

私も委員の一人でして関わっていた、内閣府が実施した
「女性のライフプランニングに関する調査」(2006年)をひも解いてみましょう。
未婚、既婚で子どもがいない家庭や、既婚で子どもが3歳以下など
ライフステージごとに働き方の理想と現実などの質問項目をまとめた画期的な調査です。

「女性のライフプランニングに関する調査」(2006年、内閣府男女協同参画局)
http://www.gender.go.jp/danjo-kaigi/kansieikyo/raifupuran1903.pdf

働き方の希望に目を向けると、結婚していない場合は、
「残業もあるフルタイムの仕事」を希望する方が約75%程度と多いわけですね。
それ以外に、「フルタイムだが残業のない仕事」を希望する人も合わせて、
9割以上がフルタイムを希望しています。
また、結婚後子どもがいない女性も「フルタイムで働く」と。

問題は、子どもがいるときですね。
わが国の女性の場合、3歳以下の子をもつ女性で、「残業しよう」とする人が1~2%いるかないか。
いろいろな生き方、働き方があってもいいと思いますが、
アジア新興国の女性たちと比べると、かなり違います。
その他は、例えば、「フルタイムで残業がない」働き方を希望する人は約1割。
「短時間勤務」を希望する人は約2割。あとは「家でできる仕事」とあります。
「家でできる仕事」というと、仕事内容が限られてきますが、
例えば、通信教育の添削などです。
一方、子どもが4歳以上になってくると、短時間勤務希望者がだんだん増えてきますよね。
小学生になると「フルタイムだが残業のない仕事」を希望する方も増えてきます。

日本の現状はというと、フルタイム勤務=残業付きです。
やはりここは国と企業双方が環境を整備して、女性を活用していくというのが大切だと思います。
あと、残業のない環境も大切です。

-今はどちらかと言うと、短時間勤務制度などを利用するゆるやかな働き方が
クローズアップされているようには感じますが、いかかでしょう。


まず、現状把握をしましょう。
育休を取って働き続ける方は確かに増えています。
しかし、1985年ごろと比較しますと、働き続ける女性の絶対数は、実は変わっていません。

これには、2つの議論があります。
1つは、「就業継続できる環境がまだ不十分ではないか」、
つまり、育休や短時間勤務をもっと拡充させれば、ここはもっと増えるのではないかという意見。
この意見に対して私はそうではないと見ています。
なぜかと言うと育休などの制度で十分拡充してきていますから。
育休取得率は増えてきたのに、全体が増えないということを考えると、
2つ目の議論として、自発的、選択的に仕事を休まれている方の存在は見逃せません。

出産を機に会社を辞めるという選択の多くの理由は、
「やはり子育てに専念したい」「子供が幼いうちは、主体的に育児に関わりたい」という意識。
これ自体はおかしな話ではないと思います。
そのような希望があれば、かなえられるべきなのが近代社会ですから。

問題は、“就業継続はしないで、子どもは小さいうちは自分の手で
できるだけ育てよう、育てたいと思っている人”です。
彼女たちも子どもが大きくなった後は、復職したいと言っています。
ですから、そういう女性をまた社会に戻す、そのルートが日本はまだ弱いですね。

-仕事の空白期間が長いほど、いざ就職したいと思ったとき、企業側の受け入れが厳しい現実が。
そのため、当プロジェクトでは、あまりブランクを作らないようにということを提唱したいと思っています。
現在ある具体的な支援策を教えてください。


「マザーズ・ハローワーク」というものがあります。
しかし、機能面はもちろん、仕事のバリエーションにあった支援体制などまだまだ拡充が必要です。
これは国など、公的な役割なしでは成り立たないもの。
少なくとも「マザーズ・ハローワーク」に対する公費の投入額を多少増やして、
そこで扱える職業を増やしていく必要があるのではないでしょうか。

後編に続く・・・

働くママにエールを!(第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部主席研究員 松田茂樹さん)【後編】:
http://kiracareemama.com/2012/06/20/7606

(文・構成 加藤京子)
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プロフィール
第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 松田茂樹さん

第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部主席研究員。博士(社会学)。
仕事と生活の両立や少子化などの調査研究に従事。
これまでに、内閣府「ワークとライフの相互作用に関する調査」アドバイザーグループ委員や
少子化担当相少子化対策プロジェクトチーム委員などを務める。
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関連URL
第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部 ライフデザインレポート
http://group.dai-ichi-life.co.jp/cgi-bin/dlri/life_d_report.cgi