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2012年12月6日

働くママにエールを!(JPホールディングス代表取締役、日本保育サービス代表取締役 山口洋さん)

投稿者
キラきゃりママ編集部 キラキャリママヘンシュウブ [Editorial department of Kira-caree Mama]
働くママとプレママのためのポータルサイト『キラきゃりママ』の編集部です。
「働くママのリアルを、みんなの知恵で支える」をテーマに子育て、仕事/キャリア、
プライベートなどの切り口から働くママ&プレママに役立つ知恵や情報を発信。
また、働くママ&プレママはもちろんのこと、各種専門家、企業、教育機関、
国や自治体などとの連携で働くママ&プレママが自らのベストワークライフバランスを
見つけることができるよう、サポートしています。

【第5回】JPホールディングス代表取締役、日本保育サービス代表取締役 山口洋さん

【テーマ】働くママと保育環境



待機児童をはじめ、保育士不足、制約の多い延長・病後児保育など
さまざまな問題を抱える保育業界において、
「お手本を作り、日本の保育のあり方を変えたい!」と
抜本的な変革に力を注ぐJPホールディングス代表取締役山口洋(ひろみ)さん。

子会社・日本保育サービスが展開する115の保育園では、
深夜までの延長保育や一時保育、休日保育、年中無休を実現するなど、
社会のニーズや地域特性に柔軟に対応したサービスを提供しています。

厚生労働省調査によると、保育所に入れない保育所入所待機児童数は24,825人(平成24年4月1日発表)。
潜在的には、都市部を中心に待機児童数は80万人を超えると推定され、
厳しい経済状況下、子育てしながら働きたい女性にとって、
保育環境の整備は切実な問題です。国や各自治体で待機児童解消に対応したさまざまな動きはありますが、
大切な我が子を預ける親にとっては、量的側面だけでなく、質の確保も気になるところ。

厚生労働省や内閣府などの委員や有識者に選出され、国の政策面からも
保育問題の解決に取り組む山口さんに、保育に対する想いや園の選び方を聞きました。

―待機児童解消の救世主と広く期待される一方、一部地域では、
民間の保育事業参入への風当たりがいまだ強い状況です。


反対派が声高に訴えるのは、「民間の保育事業参入を促進することは、
保育の質を低下させる要因だ」という理論。
2001年、保育の世界に参入して驚いたことのひとつに、保育をめぐる業界や教育機関にいる人の多くが
“株式会社による経営=すべて悪”と信じて疑わないということがありました。

しかし、首都圏の保護者で「株式会社以外で選びたい」という人は
ほとんどいないと思いますよ。

運営主体に関係なくいろいろな園を見比べ、どこの評判が高いか、
サービス面で優れているかという中で最終的に決めます。
当社の江戸川の園は、地域の一番人気で、今や「“株式会社”だからダメ」とは誰も言いません。
近隣にモデルとなる園がないと、根拠のない妄想や憶測が許されるんです。

―著書の中では「保育業界の常識は、社会の非常識」と辛口な言及も。

例えば「株式会社が運営すると、確実に質を落とす」とか
「経営が不安定で温かみがない」とかね。そんなわけがない。
私は、株式会社だからすべてがいいと言っているわけではないんです。
社福(社会福祉法人)だから、公立だからいいというわけでもない。

厳しい経済情勢下、共稼ぎで頑張っている女性たち、さらには
離婚率の上昇に伴い急増しているシングルマザーたち。
働いている人の事情を考慮せず、自分たちの都合だけで
運営しているところが多いんです。

何かというと『子どものため』と言いますが、自分たちのためとしか思えない対応です。
もちろん対応できることとできないことの線引きは必要ですが、
現実の世界を俯瞰して考えればわかることを、わからない人、
常識のない人同士で納得してしまう。それが今の業界論です。

-「保育の質をよくしたい」という思いは、本来一緒のはずなのでは?

「夜は仕事をしたくないので夕方までしか預からないし、
日曜や祝日は休みたいので子どもを預からない」というのが一般的な業界の体質です。
残念ながらルーティーンワークの中で動いている園は少なくない。

学問的なことや発達障害ひとつとっても、日進月歩でいろいろな研究がなされ、
子どものことでわかってくることがいっぱいあります。

新しい知識を取り入れることもなく、10年前と同じことをしているの
は相対的な質が下がっているということ。
もちろん、一生懸命運営している園もありますし、公立でも地域に
よっては質の向上に真剣に取り組んでやっているところもあります。

大事なのは、運営主体に関わらず、事業者どうしで競い合い「質」
を高める仕組みをつくること。公立、社福、株式会社も含めて、国や
自治体の認可基準をしっかりとしないといけないと思っています。

-幼保連携、「子ども・子育て新システム」など、業界の動向がよく見えません。

まだまだ混沌とした状況です。政府が今後の子育て支援施策の基軸として
推し進める「子ども・子育て新システム」も、骨格部分はたしかにできたけれど、
その制度を動かすための細かな内容がまだ決まっていません。

近いうち法律でいう省令に相当する部分のガイドラインができるはずだけれど、
一番の問題は、「実際に導入して思うように動くかどうか」。
うまくいくかどうかは、正直だれにもわからない部分で、
とりあえず動かしてみてそこから変えていこうという考えだと思います。

幼稚園も保育園も目的としているのは、「子どもの健やかな発達成長と教育」。
中央教育審議会(中教審)の答申の中で、「養護と教育を一体的に行う」
「教育とは、幼稚園指導要領の教育に準拠する」と明記されており、
両者を違うと感じるのは何かがおかしいということ。
幼保連携と言いながら、現状ほとんど進んでいないのが現状です。

-山口さんが定義する質のよい保育とは?

いつも申し上げているのは、「保育園の質=保育士の質」ということ。
安全・運営面で日本の最低基準以上を守るのは当然で、それを
担保できればあとは保育士の質に尽きると思います。
具体的には、やはりやさしいこと。勉強もしていて、さらに子どもや
保護者にやさしく接することができる。まず相手の気持ちを受け止めたうえで、
本当に子どもたちにとっていいことなのか悪いことなのかを判断する、
それが基本です。

夕方、お母さんが残業で預かり時間内にたまに間に合わないということはよくあります。
そういうとき、早く帰りたいと思っている保育士と、その仕事を心から楽しんでいる保育士と、
もし同じように遅延の電話がかかってきたら対応が全く違うんですよ。
「1分でも早く帰ってきてください」ではなく、「お子さんは安全に預かっていますから、
事故のないようにゆっくり帰ってきてください」と、かける言葉も180度違います。

職員が楽しく働いているということは、自然と気持ちが言葉として
出てくるんだなと。ちょっとしたことだけれどそこがやさしさだと思います。
人間同士のコミュニケーションですからケースバイケースですが、
子どもに対しても保護者に対してもやさしさっていうのは大切ですね。

―利用者に喜ばれたサービスを教えてください。

保護者の負担軽減となったと好評なのは、お昼寝布団の完備。
一般的にお昼寝布団は、保育園では保護者が毎週末に持ち帰り、
家で洗って干して週明け朝にまた持ってきます。
きょうだいがいる人などは、雨の日本当に大変。
「かさばって重い」「大変」という意見がたくさん寄せられたことに対応し、
外国輸入の洗える抗菌マットレスを導入してカバーはうちの園で
洗ってあげることにしました。

マットレスは、アメリカに視察にいったときにアメリカの保育園で
見つけたすぐれもの。それも指定管理を受ける際、公立園の園長と
ケンカしたことがあり、審査を受けた時に「なんで布団まで洗って
あげるんだ。そんなことまでやったらお母さんを甘やかすことになりませんか」と
指導されたことがあります。

わが子の布団を洗うときに愛情を感じるからというので、「布団を洗う暇があったら、
子どもとの時間を増やしてほしい」と応酬しました(笑)。

そのほか、園で出る汚物の破棄。通常、保護者は汚物を持ち帰らされることが
多いけれど、園で処理してほしいという声を受け承諾しました。
現在、うちが展開するすべての保育園で導入しています。

-安全面の研究も本格的に進めていますね。

安全であること、子どもが1日を楽しく過ごし思い出に残ること、
利用者から本当に必要とされること、現場の社員が楽しく働けること。
私が大学院で学んだ知識と経験をもとに固めた4つの運営理念です。

乳幼児の傷害予防を専門に研究している、独立行政法人産業技術総合研究所の
心理学者の掛札逸美さんと、本部の専任の安全対策担当が一緒になって研究会を発足し、
施設を掛札先生にまわってもらって、1軒ずつ評価してどういう風に
安全性を高めていくかを検討しています。

また職員だけでなく、保護者からも声を聴き、一緒になって改善して
結果を保護者にもフィードバック。SIDS(乳幼児突然死症候群)は
ほとんどがうつぶせ寝の時に起こりますが、現場ではなかなかなくなりません。

そのため内部監査を徹底的に行い、うつぶせ寝実態はゼロにしました。
監査でチェックしながら、専門の研修を受けたり、救急法で蘇生術の練習をしたり、
幼児用のAEDも入れたり、安全な場づくりを追求しています。

-読者にメッセージを。

保育園を選ぶとき、いろいろ見るところはあるけれど、
まずその保育園の先生と子どもたちの表情がどうかを見てほしいですね。

経営者がどれだけ取り繕っても表情には出ますから、とにかく明るく
楽しそうで活気づいているならおそらくよい園です。
また、給食の内容は、おやつに手をかけている園は、
栄養士さんがお昼ごはんにも手をかけているところが多く、
行事食などに手をかけているところは、子どもたちに季節のものを
食べさせてあげたいという気持ちが入っていると思います。

鼓笛や発表会などの演出に力を入れすぎたり、保護者への
アピール色が強いようなところは、子どもに無理が出てきている
場合も。

保育環境のみならず、キャリア評価制度、強制的な夫の転勤など、
ワークライフバランス面でも悪しき慣習が根強く残っています。
こちらも本腰を入れて、改革に関わっていきたい。
働く女性にとっては壁が多い社会環境ですが、負けずに新しい
時代を切り開いていきましょう。

(文・構成 加藤京子)
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プロフィール
JPホールディングス代表取締役、日本保育サービス代表取締役 山口洋さん

1961年京都市生まれ。明治学院大学法学部卒業後、大和證券に入社。
法人営業やM&Aの分野で腕をふるい、1993年にJPホールディングス設立、
同社代表取締役。2006年、聖徳大学大学院博士前期課程修了(児童学)。

子会社日本保育サービスにて、保育所(通称アスク)を115施設、
学童・児童館を合め計163施設を全国に展開。
社会福祉法人アスクこども育成会理事長、
一般社団法人日本こども育成協議会副理事長、
一般社団法人「東京ニュービジネス協議会」理事。

内閣府「子ども子育て新システム検討会議ワーキングチーム」
「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム」、厚生労働省
「次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に関する保育事業者検討会」、
「児童虐待防止対策協議会」、経済産業省「第5回成長戦略検討会議」、
東京都「児童福祉審議会」など多数の委員を歴任。
著書に「元証券マン 日本の保育を変える!」(かんき出版)などがある。

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関連URL
JPホールディングス
http://www.jp-holdings.co.jp/
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