TOP > きゃりママチャンネル

2013年1月4日

働くママにエールを!(経済記者 治部れんげさん)【前編】

投稿者
キラきゃりママ編集部 キラキャリママヘンシュウブ [Editorial department of Kira-caree Mama]
働くママとプレママのためのポータルサイト『キラきゃりママ』の編集部です。
「働くママのリアルを、みんなの知恵で支える」をテーマに子育て、仕事/キャリア、
プライベートなどの切り口から働くママ&プレママに役立つ知恵や情報を発信。
また、働くママ&プレママはもちろんのこと、各種専門家、企業、教育機関、
国や自治体などとの連携で働くママ&プレママが自らのベストワークライフバランスを
見つけることができるよう、サポートしています。

【第6回前編】経済記者 治部れんげさん

【テーマ】日米ワーキングマザーの比較と共働き夫婦の育児家事分担



日本経済新聞では昨年10月22日、2012年1月~6月までの
共働き世帯の割合が過去最高の55.3%を記録したことを発表。
女性の積極的な社会進出やここ数年の景気低迷などを背景に、
夫の収入減を妻のパートで補う「生活防衛型」も増えていることが報じられました。

今や、2世帯に1世帯以上が共働き世帯に。
一方で、日本の女性就業の基本グラフである「女性の年齢別労働力比率」においては、
20歳代後半から30歳代にかけて女性の労働力比率が落ち込み
日本特有のM字型曲線を描く “M字カーブ”問題の解消が重要な課題となり、
産後女性のキャリア構築の難しさが指摘されています。

出生率2.1と高い数値を維持しつつ、日本に比べて女性の社会進出が進むアメリカ。
経済記者の治部れんげさんは、「なぜ、アメリカ女性は昇進も子どもも諦めないのか」に着目し、
2006年7月から約1年にわたりフルブライト・ジャーナリストプログラムで渡米、
ミシガン大学の客員研究員として「アメリカ男性の家事育児分担と、
それが妻のキャリアに与える影響」を研究調査しました。

現在、4歳と1歳の子を育てるワーキングマザーでもある治部さんに、
アメリカでの研究成果や自身の経験から、共働き子育てをより前向きに楽しみ、
自分のキャリアプランを見つめ直すヒントを教えてもらいました。

―アメリカ人の共働き夫婦52人へのインタビュー経験から、印象に残ったことを教えてください。

アメリカでは管理職に占める女性の割合は、すでに半分に達していて、
出生率も2.1と先進国ではまれにみる高さ。
アメリカ人男性が積極的に家事育児参加をするようになった背景には、
1980年代後半からの産業構造の変化により中産階級の男性の経済力が低下して、
妻たちが働かざるを得なくなった事情があります。

意識の部分では日米の共通点は結構あって、「仕事と育児の両立は大変」だとか
「夫が家で何もしない」というコメントは、アメリカの働く母親からもよく聞かれます。
「日本は男性の家事育児時間が短くて・・・」という話をすると
「アメリカも一緒よ」と言われるので、ワーキングマザーが抱える思いは
同じなのかもしれません。

例えば、「小さい子どもを預けるのがかわいそう」という思いも、
アメリカだと「guilty(ギルティ)」ということばで表現するので、
罪悪感を覚える内容は、日本の働く母親と何ら変わらないことがわかります。

一方、日本と大きく異なる点は、アメリカには公的な有給の産休・
育児休業の制度が存在しないんですよね。
「Family and Medical Leave Act(家族および医療休暇法)」という
1993年にできた連邦法で、育児や家族の看護を理由に12週間休むことができるのですが、
その間解雇されないというだけの制度で、休業中のお給料の補填はないんです。
しかも、ある程度の規模の会社だけで、小さい会社は適用の対象になりません。
独自の育児休業制度があるよい会社に勤めていればいいけれど、
そうでないとすごく大変というところが違います。

そんなシビアな環境下、出産後の復帰が驚くほど早く、
産後6週間や1か月での復帰は珍しくありません。
1か月の子をおいて仕事に出るって、自分のことに置き換えてみると
私はちょっとイヤなんですが・・・。
アメリカの母親の“guilty”の意識は、うんと小さな子どもをおいて
という心から来るもので、日本の場合は1年育休をとっても
かわいそうという話が出ますが、起きていることが違うのかもしれませんね。


日本と同じような困難に直面にしているにも関わらず、
アメリカ女性は、日本女性に比べて高いレベルのワーク・ライフ・バランスを
実現できているように感じました。
私がインタビューをしたアメリカの高学歴専門職女性の間では
「子どもは2人以上が当たり前」という価値観が共有されています。

―日本と決定的に違う部分は?

有給の産休制度がないことと、すべてにおいて市場主義。
公的な育児サービスは貧困層向けというアメリカでは、
日本基準のいわゆる“いい保育園”に預けようと思うと、
幼児で17万円とか、赤ちゃんで20万とか25万とか日本より
はるかに高い相場の保育料が必要です。

アメリカで評判のいい企業内託児所へ見学に行ったとき、
運営コストに関する質問をすると、「うちはテレビを見せませんから」と。
日本では当たり前のようなことがウリになるということは、
環境がよくないところもあるということですよね。

アメリカにはアットホームダッド(=主夫)が結構いて、
「なぜ主夫になったか?」と聞くと、「保育園を使いたくなかった」と言うんです。
「いい保育園は僕の給料では払えない」
「払えるような保育園だと質が悪くて」という声が目立ちました。
ベビーシッターや日本でいう保育ママにあたるファミリーデイケアなど、
保育サービスは多様化していますが、行政がまったく介入しておらず質の差が激しい。
個人で情報を集め自力で預け先を探す状況なので、
「妻の方が稼いでいるので、僕が家庭に入りました」という話もあります。
保育所に関して、日本は「数が足らない」ことが問題になりますが、
アメリカは「あるけれど高すぎる」「あるけれど質がよくない」というのが壁ですね。

今、日本でも待機児童の解決策として、「面積や人員配置の基準を悪化させてでも、
預け先を増やし、待機児童数が減ればよい」「子どもを保育園に詰め込み、
質が下がるのもやむを得ない」という議論を耳にしますが、
市場化という名のもとに、アメリカの悪いところだけ取り入れている感があります。
子どもとは社会にとって何なのかを考えたとき、質の高い保育園は
ある程度政府がお金を入れないと数を確保できないと思います。
アメリカの実情はもちろん、保育園の運営にいくらかかるかさえ知らない人たちが、
表面的なところだけアメリカの真似をして、市場化すれば親が
自由になれるかと言うとそういうわけではないと思います。

―シビアなアメリカの共働き環境ですが、復帰後の勤務環境はいかがでしょう。

フレックス制度は多くの企業で取り入れていて、子育て期間中には
在宅勤務・短時間制度を利用している社員も多い。
職位の高い管理職でも在宅勤務をしている事例があり比較的柔軟に働けます。

また、雇用の流動化と実力主義が根付いているアメリカでは、
子育てのブランク後にも再就職しやすいというメリットも。
妻のキャリアのサポートのために自分の仕事を断ったり、
出世の話を断ったり、日本なら女性がよくしていることをアメリカでは男性もしています。

アットホームダッドたちに聞いてみても、多くは一生家庭に留まるわけではなく、
専業主夫をしている時期は子どもが小学校に入るくらいまでで、
主夫といってもフリーランスとして仕事をセーブしていたり、
子どもが成長するに従って趣味や専門的な知識を仕事に変えるなど、
次のキャリアにつながるまでの準備期間として捉えていました。
「妻のキャリアのために昇進を断り、残業がない仕事をしているのだけれど、
妻の仕事が落ち着いたので僕もこれからはキャリアを」と、
ヘッドハンティングを通じて転職先を探す高学歴男性も。

興味深いのは、「給料はちょっと減らしてもいいけれど、
奥さんと休暇を合わせたいから休暇の数はこれくらいほしい」と
個別で交渉し、自分たちがどうしたいかに合わせて仕事を
カスタマイズしていました。

アメリカでは、上司と交渉したとか、勤務先と交渉したとか、
仕事面で「交渉した」という話を、女性だけでなく男性からもよく耳にします。
その人たちは共通して仕事がある程度でき、個別交渉でいい条件を獲得していきます。
裏を返せば、おそらく成果を出せない人に対する厳しい処遇があると思うんですよね。
日本もいやでも市場主義っぽくなっているので、
もっと個人が自由に柔軟に働くことができればいいのにと思います。

―アメリカ人共働き夫婦の家事育児分担はどれくらい?

ざっくりいうと、だいたいどんな国でも女性は男性の倍くらい
家事も育児もしています。
アメリカは男女の分担比が1:2とすると、日本は1:7くらい。
ギャップがはるかに大きいです。

1つの理由は専業主婦が多いので、統計的に平均値が大きくなること。
でも、奥さんが働きに出ても夫の家事育児時間は大きくは
増えない傾向にあります。

最近イクメンと呼ばれる家事育児に積極的な男性が増えているとはいえ、
子どもの病気とか責任とか大変な部分までを担う人はまだ少数。

実はアメリカでも同じで、家事分担の内容を細かく見ると、
夫は芝刈りや車の掃除などレクリエーション要素が高いものがあがります。
育児も「子どもと遊ぶけれど、ご飯を食べさせるのはやらない」とか。
イヤだっていう子どもにどう服を着せ、どう食べさせるかというのが
責任の部分。責任の部分まで夫と分かち合えると、
母親がひとりで抱え込まなくてもいいかなという気がします。

後編に続く・・・

働くママにエールを!(経済記者 治部れんげさん)【後編】:
http://kiracareemama.com/2013/01/04/8704

(文・構成 加藤京子)
=====================================
プロフィール
経済記者 治部れんげさん
1974年生まれ。一橋大学法学部を卒業後、新聞社系の出版社で経済誌の記者を務める。
2006年夏から1年間休職し、フルブライト・ジャーナリストプログラムで米国留学。
アメリカの共働き子育て事情に関するインタビュー調査を行い、
書籍『稼ぐ妻・育てる夫:夫婦の戦略的役割交換』(勁草書房)にまとめた。
2012年5月には『ふたりの子育てルール:「ありがとう」の一言から始まるいい関係』
(PHP研究所)を出版。金融専門誌記者のかたわら、日米のワークライフバランスについて、
大学・企業・行政機関で講演を行うなど多方面で活躍する。
家族は大学時代の同級生だった夫と4歳男児、1歳女児。
=======================================

関連URL